優しくされると好きになっちゃう男の心理

10代の頃、パチンコ屋でバイトしていた。

その時仲良くしていた30代半ばの男の話を書きたいと思う。

ユキヒロさん(仮名)は当時三十代半ばで、パチンコの事もよく知らない俺に色々教えてくれた先輩で、めちゃくちゃ優しかった。

当時の俺はユキヒロさんが何でも知ってるように見え、カッコいい大人だと思っていた。

バイト帰り、そんなユキヒロさんと帰っているとある時ユキヒロさんがこんなことを俺に言いはじめた。

 

「ゆうさく、俺、田中(仮名)のこと好きかもしれん」

 

ファ⁈

 

田中さんといえば、当パチンコ屋のユキヒロさんと同年代くらいの女性店員だが、容姿はバロックワークスのミス•マンデー(ワンピース)に瓜二つのいかついおばさん。

 

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どうすれば、あれを好きになるのか。

いや、俺も当時彼女とは全く喋ったことないのだが、というか他の店員ともあまり群れない孤高の人だった。

性格はもしかしたらいいのかもしれない。

 

ユキヒロさんの衝撃の告白を聞いた俺は、

 

「なんでっすかぁ?」

 

と聞いてみた。

 

ユキヒロさんは俺の質問に答えてくれた。

 

「あんなこの前、会社(パチンコ屋)でスノボ行ったやんかぁ。田中なぁ、俺にめっちゃ優しくしてくれてん。俺、田中のああゆうとこが好きで付き合いたいねん」

 

それを聞いた俺は、

 

「いいっすね!告白しましょ!」

 

とユキヒロさんに言った。

 

内心、(おもしれー)と思っていたが、人の恋を笑うわけにはいかない。応援しなくちゃ。ビッグカップルの誕生やぁ。

 

そんな使命感もあってか、俺はユキヒロさんの背中を押した。

 

「明日、告白しましょ。ユキヒロさんにそんな優しくするなんて多分田中さんもユキヒロさんの事好きっすよ。」

 

ユキヒロさん

「そうかなぁ。ゆうさくもやっぱそう思う?」

 

「絶対、そうすっよ。誰にでも優しくする人じゃないですもん」

 

ユキヒロさん

「ありがとう。ゆうさく、俺、明日やってみるわ!」

 

「頑張って!」

 

この時、俺はあのカッコよかった、大人だと思っていたユキヒロさんが実はチェリーボーイだと確信した。

 

次の日、

 

バイト終わりユキヒロさんが神妙な顔をして俺の前にやってきた。

 

「ゆうさく、ごめん。俺、やっぱ告白できんわ、田中とは今のままの関係でいいっていうか。今の関係壊したくないんや。」

 

関係壊すもなにも、今はただの同僚でしょうよ。

と思ったが。

「そうっすか、残念です。」

とだけ言った。

 

「ゆうさくごめんな。応援してくれたのに」

ユキヒロさんは辛そうな表情で言ってくれた。

 

憧れていた男が、ミス•マンデーにも告白できない意気地無しで多少がっかりしたが、俺もいきなり告白などでは無く、飯誘ってみたらどうすか?など他にも適切なアドバイスはあったんではないかと今になって悔やむ。

 

俺自身も当時の彼の年齢に近付きつつあるが、やっぱり若いうちに遊んどいてよかったなんて思う。

 

ユキヒロさんと俺はその後もバイト仲間として、普通に過ごしていたが、その半年後、俺はバイトを辞めた。

 

ユキヒロさんと田中さんはどうなったんだろうか。なんて今でもパチンコ屋の前を通ると思う。

だが、人づてにユキヒロさんが客の金を盗んでそのパチンコ屋をクビになったと聞いた。

 

ばっちり店の防犯カメラに映ってたらしい。

 

ダメな男かもしれない。

ダサいかもしれない。

でも、ユキヒロさんには人間味があってどこか憎めないそんな雰囲気があった。

俺は彼みたいにはなりたくない、むしろ俺はブスに優しくされると惨めになる。

でも、俺はユキヒロさんに出会えてよかった。

ありがとう。